とりかへばや日記

戸籍の性別を取り替えるまでの記録

家庭裁判所に行きました

昨日、居住区の家庭裁判所に行ってきた。

目的はもちろん、戸籍の性別の変更である。悪いことをしたわけではない。

 

GIDが戸籍の性別を変更するための手順は、ざっくりこんな感じである。

1.GIDの診断

精神科を受診して、他の病気ではなくGIDで性別違和があるのだと診断してもらう。具体的には、通院での面接、心理検査、知能検査などである。よほどヤバい医者でない限り、性別違和が妄想や性的倒錯(異性装で興奮したいだけで自認としてはシスジェンダーである、など)が原因であった場合は、ここで弾かれる。

ついでに、血液検査での遺伝子チェック、婦人科や泌尿器科生殖器のチェックも受ける。GID(身体は正常に男/女だが、精神的には女/男である)と、半陰陽(遺伝子的、身体的な性別に生まれつきトラブルがある)は異なるので、後者もここで治療のルートが分岐する。

ちなみに、検査は全額自費治療である。遺伝子検査とかめちゃ高い。

2.ホルモン注射や胸オペなどを開始

GIDの診断が出たら、本人の希望に合わせてホルモン注射を始めたり、胸を取ったり作ったりする。ちなみにこれは法律上は必須ではなく、オプション扱いである。なので、全額自費治療である。ここがこの後重要になる。

3.性別適合手術(SRS)を受ける

タイもしくは日本国内でSRSをやってくれる病院を探し、自分でアポを取り、精神科主治医に紹介状をもらい、持参して手術を受けに行く。病院との連絡を手伝ってくれるコーディネーター団体とかもいる。タイに行くなら利用しても良いかもしれない。

SRS自体は保険適応手術になったが、日本では同じ病気に対して保険治療と自費治療とどっちもやること(混合医療)ができない。自費治療を一つでもやると、全部自費になる。そして、ホルモン注射は日本では自費治療だ。つまり、ホルモン注射をやったことがある人のSRSは全部自費治療になる。そして、ホルモン注射を受けずにいきなりSRSをやるGIDは非常に稀である。ぶっちゃけ、自分の知人には一人もいない。そのため、日本では実質SRSは自費治療のままである。自費なので病院によって費用はまちまちだが、手術だけで100万以上かかる。

4で必要になるので、間違いなく手術をしましたよという診断書をもらっておくことを勧めておく。

※先の裁判で、この段階は必須ではなくなった。しかし、未手術で通るかどうかは、判例ができた現在でもなお、申立人の状態によると思う。正直、全く手を加えておらず、自身でも外見や振る舞いなどの工夫、すなわち『赤の他人が男と思うか、女と思うか』での埋没努力を全くしていない状態で裁判が通るとは、自分には思えない。

4.性別変更用の診断書を書いてもらう

精神科医2名、生殖器を診察した婦人科か泌尿器の医師(と、胸オペやSRSをした医師)の名前、診察日、手術日、治療内容、そして「この人は間違いなくGIDですよ」ということが書き記された、専用の形式の診断書が必要になるので、書いてもらう。だいたいの場合、ホルモン注射や定期診察をしてくれている主治医に依頼すれば書いてくれる。

精神科医1名にしか診察を受けていなかった場合は、ここまでにもう1名の診察を受ける必要がある。

ちなみに、この診断書ももちろん自費である。病院によるが、数万かかる覚悟が必要。

5.申立書を記入する

裁判所のサイトにある例を参考にしながら、申立書を書く。普通はプリントアウトして手書きなのかもしれないが、自分は綺麗に書ける気がしなかったので、Photoshopを使って記入したデータを印刷した。それでも全く問題なく受け取ってもらえたので、必ずしも手書きでなくてもよさそうだ。

収入印紙800円と、各裁判所ごとに決められている金額の郵便切手と、生まれてから今までの全部の戸籍謄本を用意しておく。

6.家庭裁判所に提出する

住んでいる地域の家庭裁判所に、4の診断書、5の申立書に収入印紙を貼ったもの、切手を持っていく。郵送でも受け付けてくれる。

書類審査、質問書への回答、そして裁判官と数回直接面談をして、性別変更をしてもいいかの判決が出る。

7.ありとあらゆるものを変更する

判決書を持って、旧性別の書いてあるありとあらゆる名義を変更して回る。保険証、免許証、口座、クレカetc… くそめんどくさい。

 

ちなみに、名前の変更も同じく家庭裁判所の担当であり、これに近い。名前変更には手術や診断書は要らないので、これで言うと5から先をすることになる。変更を希望する名前を通名として使っている証拠(手紙、会員証など)や、GIDである診断書(専用形式でなく普通ので良い)があれば、割とすんなり通る。

 

さて、ここからは、実際に家庭裁判所に凸してみたレポートである。

自分は、名前の変更のときは、郵送で家庭裁判所とやりとりし、一度も出廷しなかった。今回も郵送でもできたのだが、せっかくなので直接申し立てしに行くことにした。ブログのネタにもなるし。

なお、以下は、自分の居住区の裁判所で、自分が申し立てしたときのことであり、地域や当事者によって多少変わることがあるのをご承知いただきたい。

 

書類などを持参し、居住区の家庭裁判所へ。特に予約などは要らない。

一般来所者用入口に向かうと、手荷物チェックがある。荷物を全部下ろし、X線で検査され、自分も金属探知機を通る。さながら空港か、もしくは舞浜の某園のようである。

それを抜け、申し立て希望者用の窓口に行き、順番を待つ。

呼ばれたら、申立書と診断書と戸籍謄本をを提出する。

ここで、自分は罠に引っ掛かった。戸籍謄本(全部事項)を取って安心していたのだが、「生まれてから今まで」のものが必要だというのを見落としていた。自分の場合、出生時の戸籍→それが平成中期にデジタル化で再編されたもの→名前の変更のときに出生地からいちいち取り寄せるのが面倒で親の戸籍から独立したときのもの の3種があるのだが、役所でただの「戸籍謄本」を取ったら、一番最新のやつしかなかったのである。

これを担当してくれた職員さんに指摘され、急遽、古い2本を取る必要が出てきた。出生地に連絡して郵送で送ってもらってまた持参して…という手間と時間を想像して絶望していた自分に、職員さんから朗報が。

「今年の3月から、全国どこの役所でも戸籍を出力できるようになったんですよ」

ΩΩΩ<な、なんだってー!?

今まで、他県にある戸籍の謄本とかは、その役所に直接行くか、郵送で取り寄せるしかなかった。例えば五年前から今まで東京に住んでいても、生まれたのが北海道だったら、「生まれた年~五年前の内容の戸籍謄本」は、北海道に行くか、北海道の役所に依頼して郵送してもらうのを待つしかなかった。

それが、今年から、東京の区役所でも、北海道時代の戸籍を出力してくれるようになったというのだ。

ほー、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、こういうので。

とりあえず申立書は受理してもらえたので、今住んでいる区役所で「生まれたとき~現在地に戸籍を移すまで」の戸籍謄本を取り、裁判所宛てに送ればOKと教えてもらい、受理された控えを渡され(これは「家事事件」なので、「事件番号」というIDが割り振られており、今後のやりとりのために控えをもらえる)、終了。比較的空いていたのもあり、だいたい30分ぐらいで裁判所を出た。

そして、その足で区役所に行き、「生まれてからの謄本で」とお願いしたら、本当に他県の時代の戸籍まで出してくれた。生まれた頃、すなわち平成初期の戸籍は初めて見たので、興奮して写メを撮ってしまった。ここで「写メ」という言葉を使うあたり、平成初期生まれがバレる。

忘れる前にそのまま郵便局で裁判所に書留で発送し、一連の手続きは終了。意外とあっけなかった。

 

このあとの流れとしては、週明けくらいに裁判所の担当書記官から、追加で質問を書いてある手紙が届くらしい。それに記入して送り返し、その後に直接裁判所に出廷して面談をして、ようやく判決が出るそうだ。8月末には決着が付くだろうか。少なくとも、涼しくなる前には、書類上も男になれそうだ。

長かった。先が見えて、少しだけ晴れやかな気持ちだ。まぁ、実際の生活では、判決の前も後も、何も変わらないんだけれど。

朝起きて、髭を剃り、着替えて、満員電車で出勤して、仕事して、男子トイレの個室で用を足して、満員電車で帰る。女性専用車両には今もこの先も乗らないし、女子トイレも使わない。食べ放題は今もしっかり男性料金で食ってるし、女性用のサービスは当然のように自分の隣にいる彼女にしか案内されない。繁華街を歩くと、何かの店のお姉さんに「いかがですか~?」と声を掛けられる。サービスしてもらうアレを持たないので当然ついて行かないが、最近の好みは白桃○なさんだ。

ただ、保険証に書いてある「女」の字は、もうすぐ「男」に変わる。それだけ。