とりかへばや日記

戸籍の性別を取り替えるまでの記録

これまでのこと。

いろいろあってブログを作り直しました。以下は前のブログからのコピペです。

 

序章

ブログってよく考えたら相当久しぶりに書く。

最初に書いたのは中学生の頃にジオ○ティーズでホームページを作ったときだったから、20年くらい前になるかもしれない。

これは、そんな年齢の、そこらへんにいる人が書いてるブログである。

強いて言えば、性同一性障害FtMというちょっと厄介なものを持ってるってことくらいカナ……。

 

性同一性障害トランスジェンダーとは、生まれた身体の性別と、自覚している性別に違いがあり、身体の性別に苦痛を感じる人たちのことを指す。FtMは身体は女(Female)で心は男(Male)の人。MtFはその逆である。

我々は、ほんとにそこらへんにいる。

普段は駅の男子トイレの個室で用を足し、着替えは男子更衣室に連れていかれ、食べ放題はしっかり男性料金を取られるが、股間を見ると男性器はなく女性器を持っている。染色体もまごうことなきXXである。ちなみに、後述するが、自分は乳房は切除したので真っ平な胸に乳首だけが付いている。乳房だけでなく胸筋もないが、それはただの筋トレ不足である。

世間一般のXYの男性の中に混じって、ほんとに普通に生きている。いちいち「トランスジェンダーです!!!!」と言って回って無駄に目立っても、面倒事ばかりで一つも良いことはないからである。世間のトランスジェンダーの多くが、そうやってシスジェンダー(身体と心の性別が一致している人)たちに紛れて普通に暮らしている。ちなみに、業界用語でこれを「埋没している」と表現する。

 

性同一性障害と気付くまで

生まれてから物心つくまで、いや物心ついてもしばらく、普通に女子として育った。

セーラー○ーンもおジ○魔女も好きだったが、電車も好きだった。平成ラ○ダーにもハマった。ウルトラな人と、戦隊ものはそうでもなかった。

小学校5年生くらいから、スカートよりズボンがしっくりくると思っていた。

そして、中学進学時、これから毎日セーラー服を着ると思うと、反吐が出るほど嫌なことに気付いた。

そこから十年、「女子」と言われることに、なんとなく違和感というか、モヤモヤしたまま生きた。

ちなみに、高校生になる頃には、制服のスカートを着るのが少し好きになった。それは、当時憧れていた中学時代の女子の先輩が一年先に母校の高校に入学していたのだが、先輩の制服姿がすごく似合っていて可愛くて惚れ直した(そして同じ高校に行くために全力を尽くした)というのも大きいが、それを抜きにしても今でも気に入っているほど清楚系で可愛いものだったので、正直なところ『女装』『コスプレ』としての感覚だったのだろうと思う。

 

大学に入り、成人して(この頃には『女装』にもっとハマっているので一瞬ロリータ服に手を出したりもした。そして二次元キャラのコスプレイヤーにもなった)、なぜか彼女ができた。ちなみにその前に男とも付き合いかけたことがあったが、本当に何もせずに自然消滅したので、元彼とカウントしていいかもわからない。

そして、とある概念を知った。

性同一性障害トランスジェンダーである。

これじゃん。

びっくりした。これまで心に刺さり続けていた机のささくれみたいなトゲの正体がわかった瞬間だった。

そして、レインボーパレードで出会った先輩当事者に背中を押され、精神科の門を叩いた。

精神科診察、心理検査、知能検査、染色体検査、婦人科診察。半年近くかけて、あと結構なお金もかけて、やっと性同一性障害の診断が出た。

これが2016年のことである。

 

ホルモン治療開始

社会人になり、経済的に自立して、2018年から、男性ホルモンの注射を打ち始めた。

自分の打ってもらっている男性ホルモン注射は、エナルモンデポーという商品名のもので、2週間に一度、腕か尻に筋肉注射をしてもらうものである。筋肉注射は、世間的にわかりやすいもので言うと、コロナのワクチンと同じ打ち方のやつだ。

つまり、割と痛い。

しかし2週おきに打っていると、全然気にならなくなる。

お値段は、だいたい2000円~5000円くらい。自由診療なので病院によって結構異なる。

これを14日おき、つまり一年で20回くらいなので……。

ソシャゲのガチャなら200連くらい回せそう。回したい。

でもそれだけの価値はあった。

生理は止まった。声も低くなった。筋肉もめちゃついた。髭も生えた。股間もちょっと変わったが、コンプラを意識して一応詳細を書くのは控えておく。男らしくなった、とだけ言わせてほしい。

邪魔に感じたので、乳房も2019年に切り落とした。2019年10月から消費税が上がることになったので、駆け込みで9月下旬に手術をした。自費で数十万の手術なので、消費税の増税はデカいのである。こんな駆け込み需要があるんだ、とあちこちで笑われた。自分でも笑った。

そして名前も男っぽいものに変更した。

改名は意外と簡単だった。裁判所のホームページを読んで、必要な書類を記入して、性同一性障害の診断書の写しを添付して、必要額の切手とともに居住区の家庭裁判所に送り付けるだけ。

追加の質問用紙が返ってきて、それに記入して返送すると、一か月くらいで戸籍を書き換えてもらえたように記憶している。免許や口座の名義変更のほうがよっぽど大変だった。

 

現在の話

今は冒頭に書いたように完全に男として認識される風貌で生きている。

胸オペや改名が済んでから転職した今の職場では、マイナンバーや保険証などを見ることがある管理職以外には戸籍の性別を公開していない。

同僚は皆、自分を生来の男と思っており、彼女を『内縁の妻』と思ってくれている(同居しているが、税金の手続きなどの書類では配偶者なしになるので)。実際は戸籍上での同性カップルなのだが。

今でこそ男性用のトイレや更衣室などを普通に使って生活しているが、女性用から男性用への移行、中でも特にトイレは一番苦労した。ホルモン注射を始めるまでは女子トイレだったが、ホルモン注射を始めてからしばらくは多目的トイレを探して歩いた。多目的トイレがない場所では、女友達に同行してもらったり、人目が少ないトイレを探したりして、なるべく目立たないように女子トイレを使った。

ホルモン注射で地声が低くなってきた頃、多目的トイレがないところで、勇気を出して男子トイレの個室に入った。

意外と何も言われなかった。

そして、その頃には、女子更衣室に入ろうとするとスタッフに止められたり、女性専用車両で白い目で見られたりすることのほうが目立つようになってきたので、腹を括って男子トイレ、男子更衣室を使うようになった。

温泉は一番ハードルが高かったが、胸を取ったくらいから、必要時はタオルでなるべく隠しつつ入れるようになった。

胸は平らなら特に気付かれないし、股間エピテーゼなどもあるが、値段も高いし、装着も大変だし、一度風呂の中で取れて冷や汗をかいたこともある。いろいろ試した結果、自分の場合は、腰のあたりでタオルを持ち、股間のイチモツを隠している風を装うのが一番だった。もちろん個人差があるので、FtM当事者はそれぞれいろいろ試してほしい。一番良いのは、心を許せる男友達に同行してもらうことだろう。紛れやすいし、外から見て変なところを指摘してもらえる。

 

こんな話をすると、文字だけ見て、「戸籍上女なら女子トイレや女子風呂を使え!」と言う人がいるかもしれない。インターネットではしょっちゅう見かける声である。ただし、なぜかMtFへの批判ばかりでFtMに対しては少ないが、それは男湯に入るFtMが「いないもの」とされているからかもしれない。しかし、もちろんいる。ここにも。

こういう主張をする人に、もし自分の正体を明かさずに「大浴場はどこですか」と訊いたら、自分は男湯と女湯どちらに案内されるだろうか、と考えることがある。

やったことはないが、間違いなく男湯に連れていかれるだろう。今も、初めて利用するスーパー銭湯の受付の人は、何の確認もなく当然のように男湯のロッカーのカギをくれるのだから。

仮に今の風貌の自分が女湯に突撃したら、脱衣所で大騒ぎになるだろう。男性器は生えておらず、代わりに子宮と卵巣を持っているとしても、だ。

風貌で第三者に判断されるほうの性別の施設を利用する。これはただただ「埋没」したいだけなので、十把一絡げにそれを悪く言うのはやめてもらいたい。悪意をもって女湯や男湯に侵入する人間は、性同一性障害の有無など関係なく、ただの性犯罪者だ。性犯罪者と、埋没してひっそりと平穏に用を足したり着替えたりしたいだけの戸籍変更前の人間をごっちゃにするのが、どれほどナンセンスなことか。

 

やっとここから本題

で。

今度、その子宮と卵巣も、取ってしまおうと思う。

それがこのブログを開設したきっかけだ。

ちなみに、男性器は造らない。戸籍変更に男性器の増設は必須でないし(前述の「ホルモン注射で"男らしく"なった自前の股間」が男性器の代用として認めてもらえる)、子宮と卵巣の切除にプラスで造設分の費用がかかる。そして、わざわざ腕や足の皮膚を使って疑似男性器を造設しても、腐り落ちることもあるらしい。

だから自分は、子宮と卵巣は取り除く、男性器の造設はしないという決断をした。

 

ちなみに子宮と卵巣を取り除くことにしたのは、戸籍の変更のためだけというわけではない。

2023年の秋に、最高裁の判決で、長年ホルモン注射をしているが生殖器の切除はしていないFtMの戸籍変更が認められた。それ以降、個別のケースによるが、生殖器の切除も戸籍変更に必須ではなくなったのだ。

しかし、自分は切除する。2024年という時代に、敢えて。

理由は一つ。

うざいから。

一生使わんのに、あっても邪魔だし。

ホルモン注射で生理は止まってるけど、ホルモン注射の間隔が空いたときに生理もどきの出血が起きてボクサーパンツを汚されるのクソだるいし。

それ以上でも以下でもない。

 

手術を思い立ってから今日までのメモ

2023年11月

精神科の主治医に手術の決心を伝え、OKをもらい、性別適合手術をしてくれる国内の病院を探し、数か所に連絡を取った。

手術費用、入院期間、自宅からの交通手段、手術できる最短日程。そして、コロナ禍でもあるので、面会の制限。何十日も彼女に会えないとか死ぬ。

これらを比較した結果、関東の某病院にお願いすることに決めた。

身バレ防止で、病院名は伏せさせていただく。

 

2023年12月

手術をしてくださる婦人科の先生の初診。この風貌で婦人科に行くのはすごく気が引けた。彼女を連れていき、婦人科待合ではなく共用廊下で待たせていただけたので助かった。感謝。

 

2024年1月

あけましておめでとうとともに、親に連絡をした。お宅の娘が息子になろうとしています、という連絡である。

性別その他のいざこざで家を飛び出した後、五年ほど没交渉だったが、なんとなく和解。一応OKをもらった。

 

2024年2月~3月

関東では、性別適合手術をするにあたって、関東ジェンダー医療協議会なるものの承認が必要らしい。手術に間に合うよう、その申請手続きをしておく。一万円くらいかかった。OKの紙をもらったことで、大手を振って子宮とおさらばできることになった。晴れやかな気持ちである。

ついでに手術費用のために銀行で医療ローンを組んだ。100万オーバーのローンである。

 

2024年5月

術前の各種検査を済ませ、あとは手術を受けるのみ、というところである。

手術は今年6月。つまり来月。初診から半年で手術ができる見込みというスピード感が、この病院に決めた決定打でもあった。

 

さいごに

入院、手術の前後で、このブログを更新していこうと思う。

これから性別適合手術をする人の、そしてシスジェンダーの皆さんがトランスジェンダーを理解するための参考になれば、幸いである。

 

余談。

性別適合手術といえばタイが有名だが、国内にしたのは、タイでの手術は安いけど時間もかかるし言葉の壁もあるしで大変そうだったからである。

あとパクチーが本気で無理だからでもある。ごめん、タイの人。